キャットフードの選び方
前回は「【猫のプロ解説】キャットフードの選び方~猫の食性編~」で猫の食性についてお話しました。
前回の内容を踏まえた上で、当記事ではキャットフードの原材料を徹底解説します!
※まだ「【猫のプロ解説】キャットフードの選び方~猫の食性編~」をお読みでない方は先にお読みください。
原材料欄を見てみよう
手元に普段与えているキャットフードのパッケージがある方はご用意ください。
手元にない方は、メーカーのサイトなどで原材料名をチェックしてみてください。
※普段与えているフードではなく、気になっているorあげてみたいと思っているフードでもOKです。
それでは、一緒にチェックしていきましょう。
<注意> ・市販の成猫用ドライフード(
総合栄養食
※総合栄養食
1.主原料(第一原料)は何か?

まず、お手元のキャットフードの
主原料
主原料(第一原料)…配合量が最も多い、その製品の主となる原料。
当記事では、実際に市販されている3種類のキャットフードの原材料を例に見ていきます。
一番最初に書かれている、赤い丸をつけたものが主原料です。
Aのフードの主原料

Aのフードの主原料は「
チキン
」です。
Bのフードの主原料

Bのフードの主原料は「
小麦
Cのフードの主原料

Cは「
骨なし鶏肉
猫は多くのタンパク質を必要とする動物
肉食動物である猫は、雑食の人間や犬よりも多くのタンパク質を必要としています。 1日の必要量は、体重1kgあたり人間で約1g、犬で約3.5g、猫で約7gです。 当然キャットフードには豊富なタンパク質が含まれていなければなりません。 日本で販売されているペットフードは、AAFCO(米国飼料管理検査協会)が定める栄養成分の上限・下限などの基準を採用しています。 その基準ではキャットフードの総タンパク質量は26%以上でなければならないと定められていて、
それを下回るフードは販売することができません。
主原料のタンパク質量を見てみよう
それぞれの主原料のタンパク質量を見てみましょう。
Bのフードの小麦には100gあたり8.3g、
AやCのチキン(骨なし鶏肉も同等と仮定)には100gあたり26.3gのタンパク質が含まれています。
小麦よりもチキンのほうがタンパク質が豊富ですね。
2.タンパク質豊富な食材は何が使われているか?
他にタンパク質が豊富な食材は何が使われているでしょうか?
ピンク色のマーカーで示したものが、主にタンパク質源として使用されていると思われる食材です(主原料含む)。
Aのフードのタンパク源

「チキン生肉、乾燥チキン、エンドウタンパク、ポテトタンパク」
動物性タンパク質であるチキンのほか、植物性タンパク質としてエンドウ豆由来のタンパク質とポテト由来のタンパク質が使われています。
Bのフードのタンパク源

「肉類(チキンミール、家禽ミール等)、植物性タンパク、家禽類」
※◯◯ミールとは?
Bのフードに記載のある「チキンミール」、「家禽ミール」とは一体何でしょうか?
鶏肉から人間が食べる部分を除き、その残りから脂肪分を除去して粉末状にしたもの。
肉、卵、羽毛などを利用するために飼育される鶏肉、七面鳥などのことです。
…
粉末状にしたもの。
ミールを使用するメリット、デメリット
肉を粉末に加工したミールは、脂肪分や水分が少ないため品質を安定させやすいというメリットがあります。
一方、生肉を使用した場合に比べ風味や嗜好性が劣るというデメリットもあります。
Cのフードのタンパク源

「骨なし鶏肉、乾燥鶏肉、鶏レバー、丸ごとニシン、骨なし七面鳥肉、乾燥七面鳥肉、七面鳥レバー、全卵、骨なしウォールアイ、丸ごとサーモン、鶏ハツ、鶏軟骨、乾燥ニシン、乾燥サーモン、赤レンズ豆、緑レンズ豆、グリーンピース、フリーズドライ鶏レバー、フリーズドライ七面鳥レバー、フリーズドライ鶏肉、フリーズドライ七面鳥肉」
アミノ酸をバランスよく摂るには動物性タンパク質
それぞれのフードの原材料を見ると、動物性タンパク質と植物性タンパク質が含まれていることが分かりました。
どちらも同じタンパク質ですが、アミノ酸をバランスよく摂取するためには植物性タンパク質よりも動物性タンパク質が豊富なフードをおすすめします。
アミノ酸とは?
とは、タンパク質を構成する有機化合物です。
タンパク質は体内で消化吸収される過程で、
最終的に小腸でアミノ酸という最小単位に分解されます。
アミノ酸は20種類ありますが、 それがどれほどバランスよく含まれているかを数値化したものを
といいます。
キャットフードによく使われる食材でいうと肉、魚は満点の100点ですが、
小麦は40点、玄米やグリーンピースは68点です。
20種類のアミノ酸のうち、11種類は猫の体内で作り出すことができないため
食事から補う必要があります。
特に、そのうちの一つであるタウリンは肉や魚には豊富に含まれるものの、
陸上の植物や野菜には含まれないアミノ酸です。
不足すると眼障害や心臓疾患等、重大な病気を引き起こします。
アミノ酸をバランスよく補うためには、動物性タンパク質を積極的に摂取するのが望ましいと考えます。
3.穀物は入っているか?

あなたの手元にあるフードには穀物は入っていますか?
例では、黄色のマーカーで示したものが穀物です。
Aのフードの穀物

「
粗挽き米、玄米、ビートパルプ、オーツ麦
Bのフードの穀物

「
小麦、とうもろこし、ビートパルプ、イヌリン
Cのフードの穀物

Cのフードに至っては、
穀物として配合されているものが全くといっていいほどありません。
このように穀物不使用のフードのことを
「グレインフリーフード」
穀物は猫には不要?
穀物には炭水化物(糖質)、食物繊維が含まれます。
雑食の人間にとってはどちらも欠かせない栄養成分ですが、肉食の猫にとっては肉や魚に比べると消化吸収があまり得意ではありません。
また糖質をエネルギーに変換する際の効率も良くなく、30~40%程度しか利用できていないと考えられています。
穀物のメリット
しかし、多くのキャットフードには穀物が使われているのも事実です。
それにはいくつかのメリットがあるからです。
腎臓病予防に
リンはミネラルの一種で、歯や骨、その他さまざまな細胞に存在します。 必要不可欠な栄養素ではありますが、過剰に摂取することで
腎臓病の一因
になります。
タンパク質に多く含まれるため、グレインフリーフードなどの高タンパク食を続けているとリンが過剰になりがちです。
猫は多くのタンパク質を必要とする一方で、リンによって腎臓病にかかりやすくなってしまうことは大変悩ましい問題です。
穀物は低リン食材として役立つため、腎臓の数値が心配な猫ちゃんには向いています。
実際に病院で処方される腎臓病対応の療法食に多く含まれています。
健康維持に
穀物に含まれる食物繊維がもつ働きには、健康を維持するのに役立つものがあります。
水溶性食物繊維は、食後の糖の吸収を抑え血糖値の上昇を予防する効果があります。
不溶性食物繊維は、適量であれば便の量を増やし便通の改善に効果があります。
食物繊維には毛玉の排出をサポートする機能があり、毛玉ケアを謳っている商品には多く含まれています。
長毛の猫ちゃんなど、胃腸に毛玉が詰まりやすい子には効果的です。
メーカー側の都合も…
肉や魚ばかりを使うと、仕入れや製造にコストがかかってしまいます。
メーカーにとってコストが低く安定的な仕入れができて保存が効く穀物は、安価なフードには使いやすい食材です。
大容量で安いフードの原材料名を見ると、第一原料から第三原料くらいまでには必ず穀物(主に小麦など)が記載されています。
4.栄養添加物
さて、原材料欄に戻りそれ以外の成分も見ていきましょう。
緑色のマーカーで示したものが栄養添加物です。
あなたの手元にあるフードには、栄養添加物は入っていますか?
ここでは、3つの例をまとめて見ていきましょう。


書き出しませんが、A、Bのフードには色々な栄養が添加されています。

Cのフードには栄養添加物が一切記載されていません。
栄養を添加する理由
添加物には悪いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、キャットフードの場合は以下のような目的で添加されます。
特に猫の必須栄養素であるタウリンやビタミンAなどが添加されることが多いです。
一方、Cのフードには栄養添加物が一切ありません。
栄養成分を補うことを目的とした添加物が少なければ少ないほど、
使用している食材自体に含まれる栄養素が豊富
であることが考えられます。
5.保存料
例では、使用されている保存料を青のマーカーで示しました。
手元にフードがある方も、「酸化防止剤」や「pH調整剤(食品を適切なpHに保つ)」には何が使われているかチェックしてみてください。
一般的なキャットフードは酸化しやすい脂質を含むため、保存料が使われます。
どんな保存料が使われているかどうかも重要なポイントです。
A、Bのフードの保存料


AとBで共通して使われている保存料に ・
ミックストコフェロール
ローズマリー抽出物
BHA、BHT
クエン酸
Cのフードの保存料

一方、Cのフードには保存料が使われておらず 「
※BHA、BHT、エトキシキン等の人工的な防酸化剤は不使用。
これらの人工的な保存料はペットフード安全法によって健康に問題がない範囲に使用基準が定められているため、使用されているとしても心配はありません。
それでもCのフードは高品質にこだわり、 人工保存料を(
それどころか自然由来の保存料さえも!
)一切使用しない方針のようです。
このように、徹底的に品質にこだわって作られたフードは「プレミアムフード」と呼ばれます。
※このようなフードは酸化しやすいため、保存時には空気に触れないよう工夫が必要です。
ヒューマングレードという考え方
突然ですが、
私はキャットフードやおやつをよく味見してます。
…え?何言ってるの?
大切な家族である猫ちゃんに与えられるでしょうか?
【まとめ】猫ちゃんに合わせて総合的に判断を!
キャットフードというものは種類が多く、また大変奥が深いものです。
「グレインフリーだから良いフードだ!」
「穀物が使われているから粗悪なフードだ!」などと一概に判断することはできません。
原材料だけでなく、予算や猫ちゃんの体質、好みなどにも合わせる必要があります。
(良いフードを買ったのに全然食べてくれなくて無駄にした、なんてことはあるあるですよね…笑)
本記事で解説した基本的なことを抑えた上で、ぜひ総合的に判断してみてください。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
キャットシッターをご用命のお客様には個別のフード相談、おすすめフードなどのご紹介も承っています! お気軽にご相談ください。
<今回例に挙げたフードはこちら>
▼Aのフード
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▼Bのフード
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▼Cのフード
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